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eスポーツの真骨頂を発揮せよ

 
IeSA(岩手eスポーツ協会)代表
遠藤 徹也
   
 


コロナの影響で巣ごもり需要が高まったとき、eスポーツの飛躍的な伸びを期待した。けれども緊急事態宣言から、およそ半年が過ぎたいま、想像したほどの盛り上がりは見せていない。eスポーツに追い風は吹くのか。IeSAの遠藤徹也氏に話を聞いた。


 
 
 

eスポ元年」と呼ばれた2018年から3年が経とうとしている。117日、東北岩手を舞台に「G019サミット」は開催された。会場となる安比高原には早くも雪が降り、本番3日前には辺り一面を白く染めた。
 
G019サミット――IeSA(岩手eスポーツ協会)が主催する東北最大の持ち込み型ゲームパーティだ。今年で2回目を迎える。本来なら5月に開催されるはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大防止により半年間延期になった。
 
「来場者も協賛スポンサーも、昨年ほどの数は期待できないことが予想された。それをわかった上での開催だった」とIeSA代表の遠藤徹也氏は言う。
 
鹿児島国体をはじめとしたオフラインベントが、おしなべて中止の決断をするなかで、6か月もの期間を空けてなお敢行したのには理由がある。それは「eスポーツで地方創生を」という、設立当初から持ち続けているIeSAの理念そのものだ。

 
 
 
 
 
 

20181231日、「YOROZU CUP」の開催とともにIeSAは産声を上げた。岩手県盛岡市のリサイクルショップ「萬屋(よろずや)」を舞台に行われたオフラインバトルだ。ウイニングイレブン2019をタイトルにしたこの大会は、県内外から16名のプレーヤーを集めた。
 
熱戦に次ぐ熱戦にオーディエンスは200名を数え、オンライン観戦者は250名を記録した。すべての試合を終えたのは午後6時。2019年へのカウントダウンが始まろうとするなか、初のイベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
 
「僕らが協会を起ち上げた2018年は、周知のとおり日本国内でeスポーツが急成長した年でした。そういうこともあって続く2019年は、さらに爆発的に伸びるものと勝手に思っていた」と遠藤氏は振り返る。しかし、予想は外れる。YOROZU CUPは成功を収めたが、地方ではeスポーツはまだまだ未知の存在だった。
 
「主には、企業と行政からの理解が思うように得られなかった」と語る。たとえば企業。イベントを打つにも、選手を育成するにも、スポンサーの存在は必須だ。あるいは行政。eスポーツという新しいコンテンツを、世の中に普及させるためには、行政のバックアップが重要となる。しかし返ってきた反応は、お世辞にも歓迎モードとはいえないものだった。
 
「わからないものに対して、人はどうしても批判したくなったり、突ついてみたくなる。eスポーツがどんなものかを知っていれば、もう少し反応も違ったように思う。逆にいえば、eスポーツに対してほんの少しでも知識があれば、想像できる分どうやったら一緒に組めるかを考えてくれると感じた」
 
2019年は種まきの年だったと遠藤氏は言う。結論として、実績をつくるしかないと判断した。そこで1年間にわたって月1回のペースでYOROZU CUPを開催した。同時に、地道に企業や団体をまわりeスポーツの面白さを伝えた。

 
 
 
 
 
 

やがてプレーヤーを中心にYOROZU CUPは月例大会として周知される。額はそう大きくないが、少しずつ協賛してくれる企業も現れるようになった。また、市町村や公共団体からの問い合わせもぽつぽつと入り始めた。そして協会の起ち上げから1年後の201912月、IeSAはその実績を認められるかに、JeSU(日本eスポーツ連合)の岩手県支部に認定される。
 
コロナが降りかかったのは、2020年という新たな年を迎え、次のステップへと歩みを進めたそのときだ。オフラインイベントとして定着したYOROZU CUPは休止を余儀なくされる。大きな戸惑いがあった。しかし前向きな捉え方をすれば、オンラインでの発信方法を模索するきっかけになると考えた。
 
「結果として月12回のペースで、オンの大会を開催するようになりました。おそらくほかの団体も僕らと同じだと思う。いまがオンラインへの移行期間だと考えれば、オンの大会数はこれをきっかけに、飛躍的に伸びていくことが予想されます」
 
同時に、新規のゲームユーザーが増えていることを実感したという。来年はさらに数を増やすと遠藤氏は読む。この1110日には、マイクロソフトの「Xbox Series X」と「Xbox Series S」が発売された。その2日後の1112日には、ソニーの「プレイステーション5PS5)」が発売になった。コロナを取り巻く状況と、新しいコンシューマー機の登場は、eスポーツにちょっとした変化をもたらすだろう。

 
 
 
 
 
 

ただし、と遠藤氏は続ける。「僕らの活動は、eスポーツで地元を盛り上げよう!というところから始まっています。その意味では、人を動かすことに最大の意義がある。たとえばオフのイベントを1回打つことで、100人なり1000人なり人が集まれば、何かしらの経済効果が生まれるわけです。だけど、オンラインではそれが望めない」
 
たとえば今後、どれだけeスポーツが盛り上がったとしても、人を集められないのでは意味がない。「eスポーツだけで見ればコロナの打撃はほとんど受けていないに等しいが、地方創生という意味ではダメージは大きい」と遠藤氏は言う。
 
コロナという先の見えない状況の中で、それでは我々はどう進んでいけばいいのか。「僕らはまあ、できることをやり続けるしかないと思っている」と遠藤氏。オンラインには人が移動しないというデメリットがある反面、全国からさまざまなプレーヤーが参加し、レベルを競い合うという賑やかさがある。たとえばこれをもし地域限定にしてしまうと、参加者の数は極端に減ってしまうだろう。
 
「オンかオフかの話をすれば、それぞれに良さがあり判断に迷うところがある。ただ、おそらく正解はどちらもやることだと思う。コロナが日常になるということを想定して、その瞬間瞬間にやれることをやっていく。やり続けていけば当然課題も出てくると思うが、課題をクリアすることイコール、自分たちにとってのノウハウになると思っている」
 
 

 
 
 
その上で、オフラインへのこだわりは持ち続けていきたいと語る。117日、半年間の延期を経て開催されたG019サミットは、約200人の来場者を数えた。昨年より100人近く数を減らした。それでも会場に一歩足を踏み入れれば、ゲームパーティ特有のグルーブ感に、誰もが一気に呑み込まれる。そういう威力を、リアルイベントは持ってる。


GigaCrystaの電飾が光る。ゲーミングモニターの電源が次々と入れられていく。プレーエリアの一角で対戦が始まる。すぐそばでは別のゲームの配信が行われている。そうしてステージの大型スクリーンではオンラインによる白熱のプレーが展開されている。100人なり1000人なり人が集まれば――という遠藤氏の言葉が反芻される。
 
2019年、そしてコロナに見舞われた2020年を、おそらく私たちは種まきに費やした。そうしていま、それらは確実に芽吹き始めている。いまこそeスポーツの真骨頂を発揮せよ。


(2020.11.20)
 
 


TETSUYA ENDO◉1986年生まれ、岩手県盛岡市出身。19歳で外務省に入省し、23歳で在ニカラグア日本大使館に勤務という経歴を持つ。2018年12月に地元岩手でIeSA(岩手eスポーツ協会)を設立。翌2019年12月にはJeSU(日本eスポーツ連合)の岩手県支部となる。IeSAのTwitterのアカウント→@esportsiwate


 
 

 
 
 

撮影◉清水健太郎(映光カメラ)/文◉和野史枝(山口北州印刷)/取材協力◉IeSA(岩手eスポーツ協会)
 

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