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麻雀牌に青春を注げ

 
麻雀
川村 響
   


かつて麻雀はギャンブルとされていた。しかし競技麻雀や健康麻雀が浸透するにつれ、マインドスポーツとして認識され始めた。そしていまオンライン麻雀の普及により、eスポーツとして新たな広がりを見せようとしている。プレーヤーとして、また現在は裏方としても活動する川村響氏に話を聞いた。


 
 
 

「麻雀は8割が運」と笑う。その理不尽さが何度経験しても納得いかない部分であり、同時にまた、麻雀の魅力だと語る。麻雀プレーヤーの川村響氏だ。10代のころからオンライン麻雀をプレーし、大学3年生で出場した「学生麻雀甲子園」でチーム戦3位入賞を果たしている。
 
「スピードを競うより思考で勝負するゲームのほうがもともと得意だった。そういう意味では、麻雀は自分の特性に合っていた」
 
出会いは中学生のころ。好きなゲームではなく、勝てるゲームは何かと考えたとき、麻雀を思いついたという。「ポケットモンスターやスーパーマリオブラザーズなど、小学生のころからそれこそいろいろなゲームをやってきて、常に上位プレーヤーとしてランキングに載っていた。そのため中学生になるころには、やり尽した感があった」と話す。そのとき思ったのはこのまま高校、大学へと進み、社会に出て2030代になったときの自分は、果たしてどうかということだ。おそらくプレーヤーとしてのピークはとっくに過ぎている。
 
「ゲームは自分の人生から切り離すことができない。子どもながらにそのことだけは確信していた。それで年を取っても勝ち続けられるゲームは何かと考えた。動体視力や反射神経、操作の煩雑さに左右されず、勝つことができるゲームは何か」

 
 
 
 
 
 

麻雀は昔からあるテーブルゲームだ。基本的なルールさえ覚えてしまえば誰でも参戦することができる。年齢や性別に関係なく対等に戦える。そうしておそらく自分がシニアになった50年後60年後も残り続けている。
 
「それともうひとつ。多くのゲームは旧来のユーザーがバージョンアップについていけず、毎回一定数が振り落とされている。しかし、麻雀なら仮にバージョンアップが行われても、1から覚え直さなければならないほど、ガラリと変わることはないと読んだ」
 
初めてプレーしたのは「天鳳」だ。国内最高峰の対戦麻雀とうたわれる、オンライン麻雀ゲームだ。独学のみで戦い続け、レートランキング上位30%入りをキープするようになったのは高校生のころ。「そこそこの順位、そこそこの満足」と当時を語る。ターニングポイントとなったのは大学入学。「東北大学競技麻雀同好会」への加入だ。全国でも強豪として知られるサークルだ。
 
「いってみれば実力者の集団です。高校時代は勝てていた自分が、しょっぱなからこてんぱんに負かされてしまった」
 
同好会では実際の雀卓を囲んで対局する。ネット麻雀からリアル麻雀に変わったことへの戸惑いもあったろう。だけど、それを差っ引いても圧倒的な実力差があったと語る。「これではだめだと思った。誰かに教わる必要があると思った」と川村氏。そこには独学一本で戦いに挑み、好成績を残してきたという自負があったに違いない。しかし、プライドはあっさり捨てた。
 
「偶然にも、サークル内に天鳳の有名プレーヤーがいた。即刻、弟子入りさせてくださいと頭を下げました」

 
 
 
 
 
 

そこからの1年間は師匠に牌譜を送り、検討会を繰り返すという日々だ。やがて2年目に突入するころサークル内で1位を獲得。同時に、天鳳のランキングで上位1%入りを果たす。その後は、順調に戦績を上げる。大学2年で東北3位、大学3年で全国3位。
 
「ただし残念ながら、ここから先は勉強が忙しくなり、さしたる成績は残していない。学業に専念するために、麻雀にはここでいったん区切りをつけました」
 
それから3年が過ぎた。この春、大学院を修了し社会人になった。勤務先のNTT東日本では、「頼まれてもいないのに、eスポーツを推進している」という。その頼まれてもいない業務を通じて知り合った岩手eスポーツ協会からは、このたびメンバーとして迎えられ、スタメンのひとりとしてゲーム配信や大会運営を行っている。
 
もちろんネット麻雀には、いまも参戦している。けれどプレーヤーとしてがむしゃらに攻めまくっていた、あのころとはまた別の日々だ。当時を振り返る。
 
「勝つこと、強くなることに、何故あれほどこだわっていたのか。たとえば自分がゲームを続ける理由は、勝ちたいからだとずっと思い込んでいた。だけど、本当はゲームの話で盛り上がれるコミュニティが好きだったからではないか。いまになってそう思う。何故なら、ゲームの世界は強くなければ発言権を得られないから。僕はみんなと話がしたくって、強くなろうとしていたのかもしれない」
 
プレーヤー経験をいかし、麻雀そしてeスポーツに、この先も携わっていきたいと語る。


(2020.12.25)
 
 


HIBIKI KAWAMURA◉1996年生まれ、宮城県仙台市出身。学生時代、麻雀プレーヤーとして全国3位に入賞する。今年春に東北大学大学院を修了し、NTT東日本に入社。5月より岩手支店に勤務する。岩手eスポーツ協会のメンバーとして、オンライン麻雀大会などを手がける。Facebookのアカウント→川村 響


 
 

 
 
 

撮影◉清水健太郎(映光カメラ)/文◉和野史枝(山口北州印刷)/取材協力◉NTT東日本岩手支店、岩手eスポーツ協会
 

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