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PLAYER

 

サッカーの真髄をつけ

 
ウイニングイレブン
ject(ジェクト)
   


日本のeサッカーを背負うプレーヤーといっても過言ではない。北海道在住。第7回スタスタオンラインウイニングイレブン2021の勝者だ。冷静な判断力と優れた戦術眼。見る者をサッカーの奥深い部分に引き込むプレー。強さの理由を紐解く。


 
 
 


レヴァンドフスキが蹴る、と誰もが思った。だけども彼は蹴らなかった。左からまわり込んだミュラーにゆっくりとパスを出す。シュートを放ったのはトーマス・ミュラーだ。ゴールネットが揺れる。前半22分。「冷静」という言葉が実況者の口から洩れる。先制ゴール。強敵・てす選手を相手に勝利した決勝戦。見事な組織攻撃に目を奪われた瞬間だ。
 
ject選手のプレースタイルをひと言で語るなら、「完璧なまでのポゼッションサッカー」といえよう。本人も自負する。カウンターが主流のウイニングイレブンにおいて、「私自身は、後方からかなり丁寧にビルドアップして、ポゼッションで崩すというスタイルを取っている。ボールポゼッションの時間が長いので、どんな攻め方をされても自分のペースに引き込む自信がある」と語る。
 
事実てす選手との決勝では、その真価が遺憾なく発揮されていた。4--3の前線にRWG1枚置くという変則的なフォーメーションのてす選手に対し、ject選手は5---2で布陣を組む。安定した守備。「てす選手は非常に攻撃的なプレーをする選手。できれば先制して自分の流れに持っていきたい気持ちがあった」と振り返る。後ろ5枚はてす選手がビハインドになったとき、カウンターを食らわないための計算も含まれている。
 
「てす選手はRWGを変則的に配置することでカウンターを狙っていたが、こちらはシステムで5バックを使用しているため、仮にLSBが攻撃に参加していたとしても、最終ラインには4枚残ることになる。結果、致命的なカウンターを受けることはなかった」


 

 
 


小学2年で初めてウイニングイレブンで遊んだ。当時、サッカーをやっていたいとこの影響で、サッカーとウイイレを同時に知ったという。サッカー部時代のポジションはFW。少し意外だ。本人いわく、「パワーやスピードといったストライカーらしい能力は持ち合わせていなかった」とのことだが、ボールコントロールに長けていた。「自分が走るのではなく味方を走らせて、最後のおいしいところを持っていっていた」と笑う。
 
サッカーと並行してウイイレをプレーするうちに、周りの友人より自分が上手いことに気づく。マイクラブのレーティングで全国1位になったのは、大学院修了を翌年に控えた2016年。「当時は、学生だったこともあり試合数を稼ぐことができた。ウイイレのレートは試合を重ねることで上がるため、あくまで指標のひとつでしかないが」と前置きしたうえで、「それでもこの出来事によって、自分には実力があり、やり続ける価値があることを見いだせた」と語る。


 

 
 


現在は会社員として働く一方で、レバンガ☆SAPPOROに所属し、オフィシャルeスポーツプレーヤーとしてサッカー部門を背負って立つ。地元北海道のプロバスケットボールチーム、レバンガ北海道が運営するeスポーツチームだ。
 
「人と違うプレーをする選手」とは、チームメイトのぼぼ選手の言葉。そのため「2on2ではコンビネーションを保つのが難しい」と冗談交じりに嘆く。本人にもその自覚はあり、「試合の局面でいくつかの選択肢があったとき、相手が想像しない展開を選んでプレーしている」と語る。おそらく将棋の指し手のように、無数のパターンが頭の中に用意されているに違いない。それはすなわちサッカーというスポーツの奥深さをそのまま物語っている。ject選手のプレーがこんなにも見る者を引き込むのはそのためだ。


 

 
 


ウイニングイレブンの魅力について、彼はこう語る。「自分ではできないプレーを体現できること」。ストライカーとして前線に立っていた経験を持つject選手らしい言葉だ。そうしてまた、「自分自身が熱くなれるもの」とも話す。
 
「大人になるにしたがって熱くなれるものが減っていくというのは、おそらく多くの人が経験していることだと思う。自分も同じだ。そのなかでウイニングイレブンは何歳になっても熱くなれるものとして、私自身のなかに存在している。今年20代最後の年となる。eスポーツは反射速度が求められるため、年齢とともにプレーは劣化していくだろう。それでも少なくともいま現在は、成長できているという実感がある。この実感がある限り、ウイイレは自分にとって、熱いものであり続ける」
 
6月後半には国体予選を控えている。この記事が公開されるころには結果も出ていることだろう。その戦いぶりに我々もまた、熱くなるに違いない。


(2021.6.25)
 
 


ject◉1992年生まれ、北海道出身。2017年に北海道大学大学院を修了し一般企業に入社。会社員として働きながらウイニングイレブンをプレーする。2019年にレバンガ☆SAPPOROオフィシャルeスポーツプレーヤーとなる。小誌主催のeスポーツ大会「スタスタオンラインウイイレ2021」にて2連覇を果たす。Twitterのアカウント→@jectjectject


主な成績◉
2016 ウイニングイレブン2016(PS4)myclubモードRatingランキング1位
2018 ウイニングイレブン2019 myclubモード殿堂入りの称号「hall of fame」獲得
2019 ウイニングイレブン2019 GEO CHALLENGE CUP 北海道代表決勝大会3位
    ウイニングイレブン2019 GEO CUP 決勝大会出場
    全国都道府県対抗eスポーツ選手権(国体)2019 IBAREKI 北海道代表
2020 ウイニングイレブン2021 myclubモード殿堂入りの称号「hall of fame」獲得
    第5回スタスタオンライン ウイニングイレブン2021大会優勝
2021 第7回スタスタオンライン ウイニングイレブン2021大会優勝


 
 
 

 
 
 

撮影◉若松 伸(フォトランド)/文◉和野史枝(山口北州印刷)/取材協力◉レバンガ☆SAPPOROe-REVO
 

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